北極のペンギン

来た観た聴いた

そうね誕生石なら

想像上の7月は、情熱的だがどこか掴めない、颯爽としたミステリアスさがある。

それなのに実際の7月ときたら、ただただ殺人的に暑いばかりだ。

 

7月上旬、一泊二日の箱根旅行へ行った。

初日、雨でロープウェイは運休だったが、強羅は小雨だったのでそれほど酷くないだろうと高をくくってバスに乗り芦ノ湖方面へ。甘かった。標高が高くなるにつれ霧が濃くなり、芦ノ湖周辺はさながらサイレントヒルの世界だった。個人的な箱根の定番・山のホテルのりんごパイを食べながら、芦ノ湖……があるはずの方向に広がる真っ白な靄を眺めてきた。ティータイムの優雅さと景色の不穏さが不釣り合いに感じられて愉快だった。

山のホテルのりんごパイは目の前でソースを盛り付けてくれる

2日目も雨。ラリック美術館へ行き、オリエント急行の車両内でお茶をいただく。美術館の展示でラリックの作品の軌跡を鑑賞してからオリエント急行のこだわり抜かれた空間に踏み入ると、ラリックが創り出す世界観に浸る感慨も一入だった。芸術と工芸が交わる分野で活躍した人だからこそ、作品単体で鑑賞する以上に、実際に人が過ごす空間にあしらわれることで発揮される本領があるように感じた。

午後は湯治場の日帰り入浴へ。電子機器に触れず縁側に寝転がり蝉の声や川のせせらぎに耳を澄ませると、昂った神経が鎮まるような心地がした。

私は楽しいことが大好きで、常に刺激を求め、より強い刺激を求めるような生活をしているが、いくら刺激を浴びてもその渇きが癒えることはない。穴の空いたバケツに水を注いで更に穴を拡げているような心地すらある。必要なのは引き算かもしれないと気づく、よい時間だった。

 

そんなことを言いながらも、翌週は広島へ。目的は乃木坂46のライブ。

この夏は忙しく、うっかり全国ツアーのチケットを取り過ぎてしまったという気持ちもあったが、そんな気持ちを吹き飛ばすくらい素晴らしいライブだった。まだツアーが終わっていないので細かな言及は避けるが、キラキラした最高の夏のはじまりだ。新しい時代が始まるワクワク感。変化しながら常に前へと進んでいく乃木坂ちゃんのしなやかな強さが好きだ。

2日目は宮島へ。厳島神社の美しさよ。その時代を生きた人たちの美意識の粋を感じる。何度見ても素晴らしい。

いつも干潮時に行ってしまうので次は満潮の時間を調べて行きたい

軽い夕食を済ませ帰路につく。今は夏でも生牡蠣が食べられると聞いて楽しみにしていたが、数が少なく、お店に着いたときには終わってしまっていた。夏の牡蠣はまだ貴重なようだ。

 

更に翌週は沖縄へ。本当に狂ってる。目的はまた乃木坂46のライブ。

沖縄の市街地を少し歩いただけでも、植生や日差しの違い、特徴的な建物の構造や装飾など、見るものすべてに興奮して忙しかった。ヤシの木をはじめとする熱帯植物は、関東でも観光地に植わっていたりするけれど、なんだか寒々しい違和感があるものだ。これが沖縄では生き生きとしっくりきて、私は緯度の違いによる光の違いの影響が大きいんじゃないかと思っている。絵画なども画家の生まれ育った土地によって色のトーンが違うと感じる。日々触れている自然の色彩が芸術にも反映されると思うと、大きな自然の営みの中にある人間の営みがなんだか愛しく感じられる。

色彩の話をしつつ、それに相当する写真をほとんど撮っていなかった

それにしても、とんでもなく暑かった。沖縄って、暑いけど湿度はそれほど高くないのかと思っていた。そんなことはない。普通に蒸し暑い。1か所出かけてはホテルに立ち寄りシャワーを浴びてからまた観光に出るような有様だったが、そこまでする甲斐のある楽しい旅だった。

 

 

7月の私は異常なのでほかにも行った場所がある。

 

牧阿佐美バレヱ団『三銃士』/新国立劇場

個性豊かな登場人物が生き生きと活躍し、動きがコミカルかつ華麗で楽しかった。お話が分かりやすいので子供から大人まで楽しめる。やっぱりダルタニアンが出てくると輝かんばかりの主人公感があってテンションが上がる。

 

ミュージカル『ムーラン・ルージュ!』/帝国劇場

念願のムーラン・ルージュ!華やかで享楽的で頽廃的、人間の欲望も悪徳も呑み込んで大輪の花が咲き乱れる世界、最高でした。

井上クリスチャンと平原サティーンの組合せで二度観劇。伊礼公爵とK公爵。気品があって威厳がある分残虐さを感じる伊礼公爵、ゲスいごろつきの器の小ささと暴力性を感じるK公爵、全く違った役作りで、どちらも納得感があり面白かった。

煌びやかなムーラン・ルージュの世界

ステージに全てをかけるサティーンの生き様はエゴイスティックだが美しい。私が死んだら、下品な歌を歌ってという願いはフィナーレの華々しいショーによって果たされているのだと感じた。形に残らないもの、華やかさと裏腹に儚いもの、だからこそ心に残るもの。素晴らしいショーだった。

 

川崎水族館

ゆるファンをしているアルゴナビスのコラボで訪問。

淡水魚の水族館は珍しいと思う。小規模ながら、知らない魚がたくさんいて、生態も個性的で面白かった。どの水槽も魚が生き生きしていて元気なのが印象的。ネイチャーアクアリウムの系譜を感じる美しい水槽レイアウトも見応えがある。一般的に趣味として飼われる魚は飼いやすさの観点から淡水魚が多いのかもしれない。素人考えだけど、その影響なのかな。

 

AKB衣装展/大丸百貨店

私は乃木坂一辺倒で、AKBや他のアイドルのことはあまり詳しくないのだが、長年に亘る愛に溢れる仕事、魅力的な衣装たちに胸がときめいた。卒業ドレスを多数見ることができたのも嬉しかった。ひとりひとりのアイドル人生の最後を彩る大切なドレスたち。素敵でした。

渡辺麻友さんのドレス